新庁舎の基本計画案、驚きの総事業費

2025年3月17日に第16回「軽井沢町の庁舎改築周辺整備事業推進委員会」が開催され、基本計画として示された3つの案の中から庁舎と交流センター(中央公民館)を一体化したB案を決定したことや今後のスケジュールが発表された。その総事業費の金額を知った住民の間では波紋が広がっている。

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物価上昇率を加味すると、総額140億円超える

M(森) 総額約140億円という金額に住民の皆さんは驚いているけど、この数字はどういうこと?

S(佐藤) 新庁舎と複合施設の工事費が約81億円、総事業費が約120億円~約125億円。しかもこれは予測であり、物価上昇によって変わるという説明です。このまま工事費が上昇すると契約時には約137億円~約143億円。

M  すごい額ですね。もともとは前町長の時の計画が110億円という数字が出て、それが選挙の争点になったのよね。もっと安くするということで今の町長が選ばれたのではないの?

H(広川) 公約では「それまでの計画は凍結して見直す」ということだから、安くするという公約ではないんですよね。

M でもまさか、こんなにすごい金額になるとは町民は思っていなかったでしょう。その高価な庁舎の計画とはどんなものなんですか。

S 令和7年の庁舎改築周辺整備事業基本計画(案)というのが町のHPに資料として出ているからそれを見ると詳しくわかりますが、60ページ以上あるから読むのはけっこう大変。要点だけをまとめると、①ダンベル状の敷地だったが隣接の民有地を購入して長方形の敷地になった。②住民との合意形成を重視して意見聴取の場を設けた③3つあったプランから2つを選び。検討した結果B案(庁舎と公民館の一体化)とC案(庁舎と公民館は分離)を比較しB案を選んだ④質実剛健で品格のある軽井沢らしい建物を目指す。歴史と文化を感じさせる緑の中の庁舎がコンセプト。

H 建物のパースを見ると、中庭がありコンセプトにあったイメージの設計ですね。

S もう一つ大切なことがありました。⑤多様化する住民のニーズに応えるため中央公民館は交流センターとする。ざっくりと説明するとこんなところですね。

袖があるから振りたくなる

M 今の説明を聞くと、きっとすばらしい庁舎と公民館ができるのだろうと思いますが、やはり、驚きの金額がひっかかりますよね。人口2万人の町ですからね。

H 普通の2万人の町なら、140億円もかけられないはずですが、別荘民からの税収入があるだけに可能になってしまう。しかし、その別荘民が利用することは非常に少ない。

M 別荘民からの税収入に甘えているんじゃないの。

H まぁ、そう思われても仕方ないかもしれませんね。無い袖は振れない、袖があるから振りたくなるんでしょうか。

M 身分相応にもっと金額を抑える方法はないの?アンケートでも、役場へ行く回数が町民は年に3回、別荘民は1~0回という数字が出ていますよ。これからは役場へ行かなくともコンビニや家で用が足せるようになるから、ますます行く必要がなくなるはず。そういう建物にそんなにお金を使うのはもったいないと思いませんか。

H 町長は金額については「これから先は大きな事業の予定はない。増加しても大丈夫」と言っています。医療や教育関係には相当税金をつぎ込んでいるけど、さらにオーバーツーリズム対策や公共交通、環境整備。町営住宅の老朽化の問題だってあるし、税金はこれからも更に必要となるはず。

M 浅間山の噴火や台風被害も、地球がおかしいだけに心配。机上の計算だけで絶対と言うことはありえないから安心はできません。

H  軽井沢町は浅間山という危険な火山のふもとの町だし、急傾斜地の土砂災害など常に災害のことを考えて現在の貯金(財政調整基金)だけで足りるのかどうか、現実的に検討しなければならないはず。

S 委員会での説明によれば様々な建築資材や人件費、建設費の高騰。この人件費の中には軽井沢ならではの価格が含まれるそうですよ。

M  軽井沢価格?

S 建設のために労働者を連れて来るので交通費も宿泊費もかかる。インバウンドの影響もあって宿泊費が軽井沢は特別高い。そういうことが軽井沢価格といえるのかもしれません。

住民の声は伝わったか

 

 写真は2025年3月7日に行われた「第16回庁舎周辺整備事業計画推進員会」中央奥は土屋町長

S 基本計画決定という3月17日の推進委員会には、いつもならすぐ帰ってしまう町長が最後までいましたね。

H 町長自身が説明していました。以前の計画を凍結、見直しという公約に基づいて2年間検討してきたこと、今までに例がないほどの16回という回数で委員会を開き情報を伝え、パブリックコメントもしっかり聞いて取り入れるべきところは取り入れて町の考えを伝えてきた、と満足そうでした。

M 確かにおしゃべり会も何回かやって、パブコメは「またパブコメ募集しているよ」というくらい頻繁に住民の意見を聞く場を設けていました。

H 多くの意見を聞く姿勢はいいのですが、それだけの意見をどのように入れたのかは何ともわからない。少数意見の中にも良い意見はあると思うけど、どのような基準で意見を取り入れたかが見えない。パブコメ募集を何回も何回もやっているけど、その間に建築費高騰という問題も起きているわけだからパブコメ等はやり過ぎだという声も聞こえています。

M パブコメへの町からの返答を見てみると「貴重なご意見として承ります」なんてのばかりで「のれんに腕押し」。だから、毎回同じような意見が出ている。

S あれ?と思ったのは、「職員が20カ所の地区に出向いて住民の生の意見を聞いた。これは今までにない画期的なこと」と町長が喜んでいたけど、友人の話では「参加者は少数。時間の半分以上がDXの話で庁舎の説明は15分。初めて説明を聞いた人がほとんどで一方的な説明を聞くだけに終わった」と。

H 各地の区長の意見を聞いたと言っても区民の声ではなく区長の個人的な意見ですよ。「区民の皆さん、どう思いますか?」なんて聞かれたことはないですからね。町民、別荘民の「声なき声」を聴くということで、それぞれ1000人を無作為に選んだ意見交換会もありましたが、結果はわずか46人。

M おしゃべり会も何回もやって大勢の人が参加したけど、皆さん建築費のことなんて考えていないから「カフェがほしい」とか「映画館やってほしい」「コンビニ入れて」とか好き勝手なこと言っていました。120億円もかかると言ったら好き勝手なことは言わなかったかもしれませんね。

H 町長は担当職員からの事後報告での判断だから、やはり現場にいなければ事実はわからない。もし、委員会に最後までいれば、いつも意見を言うのは数人の同じ人で、大多数の委員が何も言わない会という会議に違和感を持つはずですよ。

S もっと議論があってもいいはずだけど、そこまで行っていないことも問題。

M  委員会は回数より中身が大事。

H やたら秘密主義で委員にかん口令を敷いたり、傍聴者には配った資料をSNSに入れるなと禁じたり、何をそんなに隠したいのだろうと逆に不信感を感じました。

比較表に納得できますか?

M 庁舎周辺整備計画では庁舎と公民館を別々に新築するという計画は資金がかかりすぎるということでA案は外され、一体化するB案か、それとも公民館をリノベーションして使い庁舎だけを新築するというC案のどちらかの選択に絞られたわけですね。それがB案に決まった理由はなんですか?

H 何でしょう?中央公民館のリノベのために1000万円もかけて調査しています。それで専門家から65年は使えるという判断が出たにもかかわらず、それを壊して莫大なお金をかけて新築するというのはこのエコの時代に合っているのでしょうか?

S B案とC案の比較表が出ていますが、金額の比較が書いてないんですよね。

M それが一番大事なのに。

H 私も見ておかしいと思った点が幾つかあります。「リノベのC案では改修時に代替え施設が必要になる」というんだけど、一時的なのだから他の公民館の利用でいいと思います。不便だという人もいるでしょうが、改修工事は公民館を使いながらでも可能な方法があるというし、一時的なのだから隣の老人福祉センターを壊さないで利用したり、他の公民館を利用するなんてことを考えないのでしょうか。旧軽井沢公民館も新築されたし、使い勝手の良い公民館がたくさんありますよ。それから、「一体型のB 案の方が工期は短い」というのも変。壊すという日程を入れていませんね。「B案は統一感のデザインにできる」と書いてあるけど、そもそもデザイン統一が必要?さらにここもおかしい。「C案では連絡通路が必要になる」って、それ別に連絡通路はいらないでしょ。普通、公民館と役場に通路なんて付けませんよ。「駐車場を北側にまとめることができる」ってなぜまとめることがいい?まとめて遠くなるより建物の近くに停める方がいいですよ。

M  広すぎる駐車場はどこに停めたかわから無くなるし遠くて不便。公用車別にして162台って大体、こんなに広い駐車場がなぜ必要なのかもわからない。ショッピングプラザじゃないんだから。

S 確かにこれは比較になっていない。CO2のことなんか入れてもよくわからないけど、壊すときにゴミや砂塵が出るってことですよ。コンクリートの大きな建物を2棟も壊すわけです。B案に持っていこうとするからこんな書き方になるんだね。

M 「C案は設計の自由度が少ない」って書いてあるけど、そんなことはないと思う。テレビのビフォーアフターを見て入ると、リノベってかなり自由にステキにできることがわかりますよ。ヨーロッパでは新築よりリノベの方が圧倒的に多いんだし。

H 建設費がどちらでも大して変わらないと推進派が言うのだけど、それはないでしょう。肝心の鉄筋、鉄骨の部分を活かして使うのと、壊して初めから造るので同じわけがない。

M 素朴な疑問ですが、コンサートや踊り、歌、大正琴などの音を出すサークルが多いけど、事務作業が中心の庁舎の方に響かないの?

S それは防音装置を設置するのでしょう。

M 大講堂や部屋も幾つか防音するとなると、結構、お金がかかりますよ。そういうことの比較を金額で書いてほしい。ランニングコストが5年後にはB案の方がかからないというんだけど、数字が出ていないから具体的なことが全くわかりません。

H 比較表を見るまではあまり気にしなかったけど、この比較表自体が不自然ですよ。いかにもB案に持っていこうとする意図を感じますね。

S 人口2万人の町にしては身分不相応なこの金額を減らすには、どうすればいいかを考えることが必要ですね。そうでなければ町民も別荘民も納得しないと思います。

M 1000万円かけて調査して、結果あと65年も使えるというなら、リノベーションして使うので十分でしょ。改築するという方法でも取らなければ、金額を抑えることは不可能ですよ。そういう気持ちがないというのは、やっぱり袖があるから振りたくなるのかな。

H 特に別荘民は納得しないでしょうね。収めた固定資産税が自分たちの使わないものにこんなに使われるのだから。それより、別荘環境の保全や樹木手入れの補助金出してよと思いますよ。登録有形文化財の別荘を守っている別荘の人たちは補修費を補助してほしいと前から言ってますしね。

M オフシーズンに決めているから、具体的な計画や金額はまだ知らない別荘民がほとんど。町民も詳しいことを知らない人が結構いる。積立金があると町長は言うけど、その7割は別荘民からの固定資産税ですよ。こういう使い方でいいのかと別荘民に聞くべきじゃない?

H 計画を知った別荘民からは「町役場なんだから町民税の範囲でやりなさい」という声は聞いています。 軽井沢だからという名前に甘えることなく、この金額をどれだけ減らすことが出来るか、設計者はもちろん、町の担当者や推進委員の方たちも真剣に考えていただきたい。これですべて決定というわけにはいかないと思います。税金はもっと有効に使うことを考えるべきです。

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