裁判その2. 軽井沢町の『条例違反、名前公表』は違法。

目次

行政指導はその合理的根拠を欠く不相当なもの

ここでは具体的にどのような判決だったかを記します。

【裁判上の人物】◆原告:軽井沢総合研究所 代表・土屋勇磨  ◆被告:軽井沢町 町長・土屋三千夫(提訴当時の被告:町長・藤巻進、担当:環境課係長・土赤淳)

【裁判所の判断】

注釈(協議書の数字は提出したときの順番を表している) (寄宿舎部分はシェアハウスとして使用)

●被告は令和2年1月31日に原告から提出された協議書⑬(軽井沢町に提出した13番目の協議書のこと)に近隣住民説明経過書対象者の意見が報告されていないので十分な内容でないとして受理せず本件公表に至ったが、本件条例・規則において、近隣住民説明経過書に対象者の意見を記載したり、それに対応する内容を記載したりすることが要である旨の定めはない。自然保護対策要綱第5・第6を見ても必要不可欠とされているとは解せない。

●本件公表までの期限が令和2年1月31日であるが、被告が原告に対し、近隣説明をしてよい旨指示したのは本件期限の10日前の令和2年1月21日である。しかも対面で意見を聞くよう指導した。これは近隣住民の対応次第であってこれらの手続を10日間のうちに完了することは相応の困難と言わざるを得ない。

●遅くとも協議書⑧の提出時点である令和元年12月5日の時点では土地利用行為の概要が決まり、近隣説明をすることが可能だったというべきである。したがって同日時点でもなお近隣説明するよう指導しなかったのは被告の対応は合理性に乏しいと言わざるを得ない。

●その他の指導について 協議書⑥に対し、テラス部分の利用につき問題がないようにすること、午後11時までの営業時間を再検討すること、シェアハウスの賃貸借契約の概要を記載すること等と被告は指導して協議書を返却している。しかしシェアハウスは既に営業が判明している状況で、その後に出された協議書④が提出された令和元年6月18日で指摘し得たというべきであり、同年11月29日まで指摘されなかったことに合理的な理由は見出せない。テラス席の利用を制限する根拠は証拠上見当たらず、本件当時の被告の土赤淳の供述を踏まえても、指導自体に合理的な理由があるとは認められない。さらに、営業時間に関する指導についても午後11時までは店舗営業は可能であることからすると合理的な理由があるとは認められない。

したがって、協議書⑥を返却する時点で行われた被告の行政指導はその合理的根拠を欠く不相当なものである。早期に行うことができたはずのものであり、これらの行政指導に従って原告が対応を継続したことにより、本件期限(又は近隣説明の実施)までの時間が費やされたことは原告に帰責すべきものではない。(計画的に遅らせたと思われても仕方がない)

          (多目的に使用できる音楽ホールの中2階)

正当な理由の有無

  • 本件勧告後に出された協議書⑥に対する被告の行政指導はその内容や指導の時期の点で合理性を欠く。
  • 遅くとも令和元年12月5日の時点で近隣説明をすることが可能であったはずであるのに、被告が近隣説明をするよう指導しなかった。
  • 住民との間で意見調整を図るとしても、被告が実際に近隣説明をするよう指導してから本件期限までの短期間に意見調整を図ることは相当困難である。
  • 本件期限に提出された協議書⑬は本件条例・規則に照らしても実質的な不備があるとは認めがたい。

これらの事情を総合的に考慮すると、原告としては本件勧告を受け、本件期限までに本件条件・規則に照らして十分な内容の協議書を提出するよう努めたにもかかわらず、被告の行政指導によって協議書が本件期限までに受理されなかったものであり、かつ行政指導に合理性があるとはいえないと評価すべきである。

            (寄宿舎はシェアハウスとして使われていた)

オープンしてから3年近く、被告は何も指導しなかった

平成27年夏頃から平成30年4月までの間、被告が原告に事前協議の手続きを進めるよう指導したとは認められず、事前協議を終えていない期間が長期にわたったことにつき、専ら原告にのみ責任があるとも言い難い。 

判決文:「本件公表は国家賠償法1条1項の適用法上違法と評価すべきであるとともに、本件公表を行った被告は過失があると認められる」

           (音楽ホール。吉村順三の設計には必ず暖炉があった)

原告が少額でも控訴しなかった理由

以上の判決内容を見ていくと、信濃毎日新聞記事の町長のコメントは事実と違うということがわかります。

2月20日の信濃毎日新聞で「軽井沢町に110万円賠償命令」の記事が掲載されました。その中で土屋町長のコメントとして「その他の請求については町側の主張が全面的に認められた。従って控訴を断念せざるを得ない」と記されていました。

しかし、このコメントは判決の内容を正しく伝えていません。「町側の主張が全面的に認められた」など、どこを読んでもそのように理解できる部分はありません。むしろ、真逆のことを言っています。多分、金額のことだけを見て言っているようで、町長は判決文をよく読んでいないのではないかと思われます。

内容をよく読んでください。原告は一部を認められたのではなく、ほぼ全面勝利です。

なお、賠償金が100万円という少額であっても原告が控訴しなかったのは、原告の提訴が全面的に認められたという裁判所の判断があったからであり、支払う資金が町民の税金であることを考慮したからだと軽井沢総合研究所代表は述べています。

前時代的で横暴な役人体質はこれを機に根本から反省し、住民の立場で指導できるような町役場になることを心から希望します。(広川小夜子)

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