自然保護対策要綱はどのように見直されているのか

軽井沢各地でホテルやマンションの建設、分譲地の開発が急ピッチで進む中、自然景観行政の要(かなめ)となる軽井沢自然保護対策要綱の改正検討部会の2回目が2024年11月18日に開かれました。議事録や資料も情報公開されていますので、それを見ながら3人で話していきます。

(議事録 11.18gijiroku.pdf )

(解説の図は公開されている軽井沢町のHPから引用しています)

目次

検討部会で十分な議論がなされたか

S(佐藤) 12月町議会で、建設中や計画中のホテル・マンションが15件もあることが明かされ、多くの町民・別荘民が驚いていましたね。15件といっても1件に2~3棟建つのもありますから実際は20棟以上ですね。

H(広川) 毎年、ビルが乱立して都会化していますから、このままでは軽井沢どうなるの?と思いますよ。

M(森) それにしても、この検討部会ってスピードが遅すぎない? 1回目は7月5日で2回目が11月18日ですからね。

H 1回目は傍聴しましたが、会議の中身がなくてほぼ自己紹介で終わっていました。これでは軽井沢の開発の現状に追いつかないと思いますよ。

S 今回も部会長の話が長すぎると批判があるようですが、数カ月に1回しか開かれない検討会ならもっと多くの委員の意見を議論させた方がいいですね。委員が40人もいるのだから、多くの人に意見を言ってもらう時間が必要です。

H 結局、今回も時間が足りず、話は途中で幕切れでした。

M 会議の冒頭に読まれた町長の挨拶文が波紋を呼びましたね。

H 「軽 井 沢 の 景 観 を 保 持 し て い く と い う 強 い 姿 勢 で 、厳 し い 基 準 を 設 け る  」「軽 井 沢 の 景 観 を 破 壊 す る よ う な 事 業 者 は 退 場 し ていただ く」などの言葉が話題になりました。軽井沢を守ろうと思ったら。それくらいの姿勢を示すことは必要でしょうね。

S 「どうやって退場していただくんだ」という意見もXのポストで見られましたが、それがこれからの課題ですね。

H 「景 観 行 政 団 体 へ の 移 行 の 検 討 や 、町 独 自 の 条 例 制 定 な ど 、 さ ま ざ ま な 可 能 性 を 否 定しない」という方向もいいと思いました。

S 「3 次 元 の グ ラ フ ィ ッ ク を 用 い て 自 然 保 護 対 策 要 綱 を 紹 介 す る コ ン テ ン ツ を 公 開 す る」というのはわかりやすくていいので、ぜひ、そうしてほしいですね。言葉で説明してもわからない部分がありますからね。」

「水戸黄門の印籠」を守りたい?

S 委員の方からは良い意見がいろいろ出ていますね。気になったのは、B委員が「建ペイ率20%のように条例にできない部分は無理としても、できるものはあるのだから、それを条例化してはどうか」と言っているのに対して、町側は「例えば景観行政団体にすると、自然保護対策要綱の中から景観の部分が抜けてしまう」と言っています。つまり、町としては町の決まりをバラバラにしたくない。すべて軽井沢自然保護対策要綱として一つにまとめたいということなんですよ。

M 早く効果を出せるとしても、ですか?

H 要綱は軽井沢町にとって50年間守って来たという強力な「水戸黄門の印籠」のような位置づけになっているから、バラバラにしたくないのでしょうね。

M そうは言っても、C委員が言っているように「実行力がなくてはいくら良い要綱でも意味がない」。A委員も「絵に描いた餅に終わるのではないか」と心配しています。

H 水戸黄門の印籠も見せるだけでは、今の時代は無視されるでしょうね。

S C委員は「昔は軽井沢憲章から外れる人もいなかったかもしれないが、今はそんなことまったく無視して利益だけを追求する事業者が多い。退場させると言っても要綱では退場させられない」と、拘束力を付けることを強調しています。町民はそう思っている人が多いのではありませんか、別荘の人も。

M E委員は「条例の作り方によってはできることも見逃しているのではないか」と例を挙げていますね。

H 県から来た委員の人が「条 例 化 すると罰 則 が あ る  か ら 、 チ ェ ッ ク が負 担 に な る、 監 視 体 制 、管 理 体 制 は か な り で す 」 なんて言っています。面倒くさいことはやりたくないというのが役人の本音なのでしょう。でも、今の軽井沢はそんなことを言っている場合ではないと思いますよ。

M 景観行政団体の町はどこもやっているわけですからね。

具体的な改正と意見は

S 委員に配られた資料がネットからも見られます。要綱のどこをどのように改正するかという案を具体的に図も入れて解説しているので、とてもわかりやすい。

H そうですね。傾斜地で露出して見える地階はその階も含めて階数にいれるということに改正される。これは図入りで説明しています(①)。

①階層の見直し

M つるや旅館前で建設中のホテルがそれですね。3階建て制限なのに4階建てに見えてしまうことが問題でした。このように改正されたら、3階建てに見えるようになりますね。早くそう決めてほしかった。

(3階建てだと言うが、どう見ても4階建てにしか見えない旧軽井沢つるや旅館前の建築中のホテル。屋根の傾斜も見えない)↓公開されているパンフレットより

S 近年増加している分譲ホテルについても定義しています。「分譲ホテルは宿泊施設の基準を適用」、「浴室、便所及び台所(簡易な流し台のみのものを含む)が設置されているものは、集合住宅等の基準を適用する」ということなので、マンションと同様1棟に19戸とされ、将来的にもマンションに変えられないようになります。

H 検討会で問題になったのは宿泊施設の駐車場の部分です。現在は客室数の半分の台数は敷地内となっていますが、広大な土地の樹木が伐採されるのを防ぐためにこれを見直すという案が出ています。しかし、委員の中からは、「そうすると、土地めいっぱいに建物を建てられるのではないか」と言う声があがりました。これはさらに検討する必要がありますね。

S 屋根の勾配もしっかり見えるように改正する案が出ています。この図(②)を見ると、今まで、フラットな屋根に見えていたのはこういうことだったのかと仕掛けがわかりました。ここまでやってフラットな屋根のように見せたいのはなぜなんだろうと思います。近隣商業地域の傾斜も20度では勾配が見えませんから変える必要がありますね。

H ヨーロッパの街並みは屋根の勾配が揃っていて美しいですよね。色も統一されているし。

②屋根の勾配

自然との共生をどこまで受け入れるか

M 私が気になるのはこの「樹木の世代更新」という部分です。「大型化した樹木は暴風雨で倒れやすい」と指摘されているけど、そうと断言するのはどうかと思いますね。しっかり根を張っているから倒れにくいとも言えるし、高い木を必要とするムササビや古い大木のウロを寝床にするフクロウのことなんかも考えないとね。なにしろ「野生動物との共存」を謳っている町ですからね。町は専門家にも聞いていると言っているけど、植物だけではなく、動物との関わりの中でも考えてほしい。

S 本来、「自然の保護のための対策」が目的の要綱だということを忘れてはいけませんよ。

H 樹木の世代更新は必要かもしれないけど、一度に変えるのではなく少しずつ変えていくことが大切で、軽井沢の緑地の多くを占めている別荘の人たちにどうやって樹木を世代更新してもらうのかは考えないとね。委員の中からも声があがっていたけど、大木ほど伐採1本に何十万円というお金がかかりますからね。それをすべて別荘民の自己負担というのは大変ですよ。町民にリフォーム資金を出すなら、別荘民にも「樹木世代更新補助金」を出すとかしないと不公平です。別荘の人は高い税金を払っていて町の財政を支えているのですから。

S そういう意見も出ていましたよ。

③樹木の世代更新

H いずれにしても、ここにあがった項目以外にもまだまだ出てきそうですね。とにかく、すべて要綱として一緒にまとめてなんて言っていたら、なかなか決まらず、その間に開発が進んで軽井沢らしさを失っていくという心配があります。

M できるところからすぐに実行していってほしい。人間の便利さだけでなく、動植物のことも考えて改正するようにお願いします。

Sどうしても自分たちの利益優先で考えてしまいがちだけど、この要綱が自然保護対策ということを再認識して、それから考えるべきですね。

M 夏期の工事禁止期間についても建設関係者から禁止されると生活に関わるという意見が出ていました。どうしても自分の生活のことを考えてしまうのでしょうけど、避暑地に工事の車が走っているのはどうなの。以前、軽井沢中学の校舎建築で真夏に国道をダンプカーが走っていたのはマイナスイメージでした。しかも中学校だからって要綱を無視して特別許可たことでむしろ反感を買っていました。役場が守らないで民間を守らせようというのは無理がある。

H 確かに、避暑地なのに工事車両が別荘地の中を走り回っているのはイメージ良くありませんよ。騒音だけの問題ではないと思う。世界のどこに、一流の高級別荘地の中をハイシーズンに工事の車が通っている所がありますか?軽井沢の未来を大切にしたいなら、そういうイメージはとても大切なことなんです。

M 生活便利優先、営利優先で決めるのは軽井沢には合いません。むしろ過去から受け継いでいる原点を礎として考えて行こうというのがこの要綱改正の検討会だと思います。委員の方は新しい町民もいるでしょうから、軽井沢のことをよく学んだうえで何が軽井沢にとって大切かを勉強して検討していただきたいと思います。

H 現状を見れば、いかに急がなくてはいけないかがおわかりでしょうから、できるところから急いでほしいと思います。すぐ、決められるような「光害に関してのこと」もまだ検討中というのもスピード感のないことを表しています。     

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