軽井沢の歴史的な別荘が話題に、その2

目次

九尺二間のヴォーリズさんの山荘

H(広川) 続いて紹介したいのは、ウィリアム・メレル・ヴォーリズのこの別荘です。ご存知でしょうか?

S(佐藤) 軽井沢会テニスコートのクラブハウスやユニオンチャーチを設計した建築家のヴォーリズですね。

H 軽井沢では別荘をたくさん設計したミッション建築家として知られていますが、社会教育家や実業家など幅広く活躍しました。そのヴォーリズ自身が夏を過ごすために設計した別荘がこの家です。

ヴォーリズが自分のために建てた別荘

H 大正9年の建築でとても話題になった別荘です。「九尺二間のヴォーリズさんの山荘」と言われ、約10坪という狭い家に、キッチン、リビングダイニング、ベッドルーム、バスルーム、石積みの暖炉も備えた機能的な設計になっています。

M 小さい建物ですが暖炉が素敵ですね。

S 外国人が建てた別荘には必ず立派な暖炉がありますね。軽井沢は夏も朝晩が寒いということもありますが、サマセット・モームの小説にも英国は植民地までも暖炉を設けたと書いてありますから、暖炉は欧米では欠かせないものだったのでしょう。

H  ヴォーリズは「軽井沢には小さな家を建てたらよい。大きな家より簡素な家を」と言っていますから、まさにこの家がそうですね。

M 最近は軽井沢に大きな家を建てる人が増えていますね。

H 「疲れた心と体を新鮮にして休息を図る場所である軽井沢では見せびらかすような大きな家より簡素な家がよい」とヴォーリズさんは言っています。

S 軽井沢の別荘は元々、簡素で素朴なものなんだよ。

M この別荘はヴォーリズさんの後はどうなったの?

H ヴォーリズのあと、画家の浮田克躬さんに受け継がれ長い間使われていました。売却の話が持ち上がったので、解体されるのではないかと心配されていましたね。先日、ようやく買い手が決まったと聞いてその方にお会いしました。

S それは良かった。どういう方ですか。

H 軽井沢に長く住んでいる40代のご夫婦です。「軽井沢の貴重な建物が壊されていくのを見てきて残念でならなかった。自分にも何かできないかと思っていたとき、この話が来て。この別荘は、前から軽井沢らしい家だなと気に入っていたんです」と嬉しそうでした。

S カフェ「涼の音」として人気の旧松方別荘(サロモン別荘)を保存したのもそのくらいの年齢の方ですよね。

H ナショナルトラストの会員の方で当時39歳のサラリーマンでした。売りに出ているのを知って壊されは困ると急いで買って大切に保存しています。知人に貸してカフェとして成功しています。

保存に成功したカフェ涼の音

           上の写真はカフェ「涼の音」

M 軽井沢独特の別荘建築は年齢に関係なく魅力があるということなのね。私ももっと勉強したいと思っています。

H 保存するのは別荘地では「不特定多数の出入り禁止」という決まりがあるので、なかなか難しい問題があります。それが保存できず壊されていく理由のひとつ。

S  別荘の保存や空き家問題についてはまた別枠で検討したいと思います。

気に入ったらシェア
  • URLをコピーしました!
目次