コロナ禍の移住ブームにのって宅地分譲が盛んに行われてきた軽井沢。全ての樹木を伐採し更地にして土地を細かく区画し、その周りにコニファーを植える業者が目立っている。
SNSで広がる苦情
更地を買って家を建てる移住者たちも造園業者に勧められるままにコニファーを植える場合が多い。しかし、最近になって、このコニファーの被害がツイッターなどSNSで問題となっている。
「エメラルドグリーン」という種類のコニファーを家の周りに10本植えたNさんは「数年前に植えたが今年になって半分以上が枯れた。みっともないので、植え替えようと思っている」とツイッターで嘆いた。それに呼応するように次々と「私の庭も枯れた」という声がSNSで広がった。
専門家の意見は
造園家で環境アドバイザーの鈴木美津子さんは「コニファーはもともと軽井沢にはなかった外来種。湿気の多い軽井沢の気候に合いませんね。ハダニやカビが発生して枯れやすいので、お薦めできません」と話す。軽井沢で多くの建築や庭園設計を手掛けてきた建築家のAさんも「人工的なので、軽井沢らしい自然な林にはなりません」とキッパリ。軽井沢自然景観会議の事務局は「歴史ある別荘地というよりは新興住宅地という雰囲気になるので、旧軽井沢や南ヶ丘、南原、千ヶ滝、追分など古くからの別荘地では景観を損ねるのでやめてほしい」と話している。
造園業者の本音
「エメラルドグリーン」など美しいイメージの名前を付けて売られているコニファーは飛ぶように売れているという。「隣地との区分になる」「目隠しとしての需要がある」「まとめて購入する人が多い」と造園業者は話す。その一方、「100本植えたが半分近く枯れてしまったと苦情も来る。勧めるのは考えなければ」と植えることを躊躇する業者も出てきている。ホテルやレストランの庭や店先が枯れ色になっているのは、客への印象を悪くするため、造園業者へのクレームも少なくない。
昔からの別荘族は植えない
軽井沢に長年暮らしてきた別荘族は決してコニファーを植えないという。枯れている状態の木が目立つということもあるが、「留まる枝がない木では野鳥が可哀そう」「目隠しと言っても、枝が横に伸びないので実際の目隠しにはならない」「軽井沢らしい風景が変わってしまう」などを理由に挙げる。
旧軽井沢で成立した「景観育成住民協定」の項目には「敷地内の樹木は在来種に」と書かれている。