国際文化都市整備機構が考える軽井沢のまちづくり

毎年8月上旬に軽井沢で行うFIACS(国際文化都市機構)による「まちづくり関係講演会」が、8月6日、軽井沢友愛山荘で開催された。

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魔法使いミッキーマウスに見る「人間の愚かさ」

基調講演としてFIACS理事長で元西武百貨店社長・参議院議員の水野誠一さんが、「最近の国内外の動きから」をテーマに、アベノミクスの失敗、3本の矢の評価を説明。日本の国力の低下、ウクライナ情勢に見る国連の無力化等について話したあと、ディズニー映画『ファンタジア』の「魔法使いの弟子」をスクリーンに映し出した。(ミッキーマウスがホウキに魔法をかけて水を運ばせるが、うっかり寝てしまい、その間に水があふれるほどになり、気づいたミッキーがホウキを壊す。するとホウキはさらに増えてどんどん水を運び大洪水になるという話)。水野さんはこの話を「文明(魔法)に溺れ、コントロールできなくなった人間の愚かさ」の例として挙げ、「今は、否常識から疑常識へと転換する『グレートリセット』の時代。今までの常識を捨てて自分たちの頭で考えることが必要。」と結んだ。

軽井沢町のマスターアーキテクトの考えは

この後、「軽井沢の教育」をテーマに、ライジングフィールドの森和成さんが「自然環境がもたらすヒトづくり」について話し、大賀ホール近くにオープンする「軽井沢安東美術館」を運営する安東奏志さんが「軽井沢の芸術」をテーマに「なぜいま軽井沢に美術館なのか」を報告した。

軽井沢のまちづくりについて話す團紀彦さん

続いてFIACSの理事でもあり、青山学院大学教授の團紀彦さんが「軽井沢のまちづくり」について話した。團さんは現在、軽井沢町のマスターアーキテクトを務めているが、直接設計に関わることはなく、町からの計画やサインについての相談にのっているのだという。「軽井沢は財政力指数が全国で5番目、財政の2/3は固定資産税という特殊な町。歴史的にみても素晴らしい人たちが軽井沢をつくってきた。優れた建築家もいる。(スクリーンにはA.C.ショーはじめ堀辰雄、雨宮啓次郎、ヴォーリズ、吉村順三などの写真が)。軽井沢は塀のない町で植生と建築が共生している」

更に現在の軽井沢について、「南口はアウトレット(プリンスショッピングプラザ)が広がっているが、北口にはもっと品格がほしい。『人様の土地に絵を描けるのか』というが、例えば、交差点の角の土地に建築する場合、『その交差点がどうあるべきかというビジョンを出してください』と言うことはできる」町の庁舎に関しては選定者である團さんが直接かかわることはないのだとか。團さんは「自然と都市が共生する町、自然を高め合っていく町にしたい」と、『自然』をさらに強調した。

このあと参加者からの質問で、團さんが田中康夫知事の時代に長野県のマスターアーキテクトとして軽井沢のまちづくりに携わっていたときの話が出て、「あの時は万平ホテルの裏手の傾斜地開発計画がありました。私は『建物を建てさせないマスターアーキテクト』でしたね」と話し、会場の笑いを誘った。

最後にFIACS会長の鳩山由紀夫さんが挨拶に立ち、「ウクライナの次は台湾有事かという話が出ている。台湾有事を日本の有事にしてはいけない。台湾有事にしてもいけない。軽井沢を愛することは当然だが、日本を愛すること、世界を愛する気持ちを大切にしたい」と平和を強調した。そして「建物を造らせない建築家っておもしろいですね」と團さんへ話しかけたのが印象的だった。

FIACS会長の鳩山由紀夫さんが挨拶
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