平成27年に軽井沢町は「人口ビジョン」を策定し、将来展望などを掲げている。アンケートを基に軽井沢町が考えた「戦略人口に基づく将来展望」のグラフを見ると、人口がほぼピークとなる2025年には2万619人という予測の数字が出ている。しかし、実際は2022年7月1日現在で2万1403人と、既に予測を超えている。更に軽井沢をよく知る人が見ると、大事なことが抜け落ちていることに気づく。
人口はどのように変わったか。
このビジョンの対象期間は2015年から2060年までとなっている。策定の理由は「人口減少に伴う地域課題に対応するため」とある。
2011年…1万9287人 2015年…2万76人 2018年…2万230人
2021年…2万1119人 (※すべて5月1日現在)
2021年に2万1千人を超え、減少どころか、うなぎ上りに増えている。2022年7月1日現在では2万1403人。さらに今後も増加することが予想される。住民課の担当者はこの現象を「テレワークの普及による移住、風越学園開設による移住の増加ではないか」と述べている。
人口減少を抑えなければならない理由とは
このビジョンでは、少子高齢化による減少は避けられないため、子育て環境の充実、将来を担う若者の定住と転入の促進などを図り「澄み続けたい町にする」ことを提案している。
なぜ、減少を抑えなければならないかという理由として、①サービス、利便性の低下 ②地域経済への影響 ③行政の財政への影響、中でも「年金、医療、介護等の社会保障に係る将来の財政負担が増す」を問題としている。
こうした内容を読むと、大きく欠落している点が浮かび上がる。それは軽井沢という町の特殊性がこのビジョンに現れていない点である。つまり、軽井沢でなくてもどこの町でも通用するビジョンになっているのだ。では、軽井沢の人口における特殊性とは何か。
軽井沢の将来展望を図るために必要なこと
軽井沢の人口の特殊性とは別荘住民が他の市町村に比べて多く存在し、常住人口をはるかに超えていることだ。
減少を抑える理由の中で重要視されているのが「行政の財政への影響、社会保障に係る将来の財政負担が増す」からということだが、軽井沢の財政を支えているのは町民よりも別荘所有者である。町の財政が別荘住民の固定資産税によって支えられていることは周知の事実であり、別荘住民は準町民として位置づけられている。観光客と違い、滞在も長く、消費行動やあらゆる商業、サービス業への影響が大きい。このビジョンが、こうした別荘住民が町に与える影響に触れていないのは不思議というしかない。
「将来の財政負担が増す」ことを心配するなら、別荘所有者が減少しないようにすることも考える必要がある。