『景観育成住民協定』を県が認定。旧軽井沢住民はどのように景観を守ったか

軽井沢の原点とも言える、ショー記念礼拝堂隣地にマンション建設が始まり、これにショックを受けた旧軽井沢の別荘住民、3人の女性が、「この場所にマンションができたら、軽井沢のそこら中にマンションができる」「何とか歴史ある旧軽井沢の原風景を守りたい」と、町長に面会を求めた。2020年のことである。

軽井沢を避暑地として見出した英国国教会の宣教師A.C.ショーが牧師を務めた軽井沢最古の教会がこの「ショー記念礼拝堂」だ。その裏手には軽井沢の洋風別荘第1号「ショーハウス」もある記念すべき場所である。10年以上、毎年この教会の前庭でショーはじめ軽井沢を支えた先人たちを顕彰する「ショー祭」が行われてきた。ショー祭を行うことを決めたのも、この場所で開催することを決めたのも、当時軽井沢ナショナルトラスト事務局長だった藤巻進さん(現町長)なのである。

女性3人はその後も面会を重ね「風致地区にできないか」「用途地域変更ができないか」「パリやミラノのように歴史保存地域にしてほしい」など訴えたが、いずれも難しいと断られ、ガッカリしていたところへ、「これはどうですか」と役場から示されたのが長野県の『景観育成住民協定』だった。

旧軽井沢には万平通り近くにマンション建設反対をきっかけに「建築協定」を制定したエリアがある。それは全員の賛成が必要なので、ハードルが高い。しかし、地権者の2/3の賛同者で協定が成立する『景観育成住民協定』なら可能かもしれない。早速、「旧軽井沢の歴史と景観を守る会」は別荘を回り説明に回った。しかし、コロナ禍で軽井沢に来ている人は例年よりかなり少なく、説明も理解してもらうには予想以上に困難であった。次第に理解してくれる人は増えて、2022年、ようやく170名の同意書をもらうことができ、4地区の申請が可能となった。

その地区は二手橋地区、愛宕地区、陣馬釜の沢地区、新渡戸通り地区の4地区である。

景観育成住民協定の内容は

  • 建蔽率20%、容積率20%
  • 一戸建て専用住宅に限る。必要以上の延床面積の建築は避ける
  • 外部の色彩、形態その他外観は、周辺の自然環境ならびに風致地区、景観と調和させる。
  • 敷地内の樹木はできる限り残し、皆伐やそれに近い伐採は断固避け、景観を守る。
  • 敷地内の樹木は在来種により、十分な水準に維持する。
  • 敷地内の駐車場や通路でのアスファルト舗装は避け、浸透性のある材質のものを使用する。
  • 敷地境界については、塀、その他の遮へい物はできる限り設けず、やむを得ず設ける場合は樹木を活用し、自然景観に同化するように配慮する。石積みの場合は浅間石を使用する。
  • 夜間の建物、樹木へのライトアップは行わない。また、動光やイルミネーション等は使用しない。夜間、輝度の高い照明が外部に漏れないようにする。
  • 騒音については、環境基本法の環境基準に準じて、特に静穏を要する地域と同様の基準とする。空調関連設備を敷地内に設置する場合は、外部への騒音が発生しないようにする。

(協定が成立する以前からの建物等の使用状況については、景観協定の「適用外」対象)

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