2023年1月22日に行われた軽井沢町長選挙。4人が立候補し、人口2万人の小さな町では稀に見る激しい選挙合戦が繰り広げられた。立候補したのは現職の藤巻進さん(71歳)、会社社長の土屋三千夫さん(65歳)、前・町議会議員の押金洋仁さん(55歳)、会社員の下田修平さん(45歳)。激戦の末、土屋氏3995票、藤巻氏2599票、押金氏2452票、下田氏605票という結果だった。投票率は55.22%(前回は44.61%)。
白熱した町長選挙を「軽井沢NOW」メンバーの3人が振り返る。
予想通りのこと、意外だったこと
M(森) 立候補者が4人というのは35年ぶりだとか。予想通り激戦でしたね。結果、新人の土屋三千夫さんが2位と1300票以上の差をつけて圧勝しました。この結果をどう見ますか?
S(佐藤)予想通りと言えば予想通り、意外と言えば意外。
M 何ですか、それ(笑)。
S 現職への批判票がかなり出るだろうということは予想通りでした。現職の対抗馬が3人になり、批判票の取り合いなるから現職が有利になるだろうという声や、土屋VS押金の接戦になるだろうという予想もありましたが、それは外れました。
H(広川)「庁舎と周辺整備に110億円、是か非か」と、争点がはっきりしてわかりやすかったということもあります。もちろん、候補者の訴えはそれだけではないのですが、これほどはっきり争点が浮かび上がった選挙はこの町では珍しいことでした。
SNS活用の効果は
M 白熱した選挙運動も興味深かったですね。
S YouTubeやHP、ツイッター、ブログなどSNSを上手に活用していました。
H ツイッターで「今日はどこで街頭演説やります」と知らせてくれるのでそこに行くことが出来るのに、現職だけはそれがなくHPを見ても演説場所が書いてないので写真が撮れませんでした。今の時代はSNSを上手に活用すべきですね。
M SNSを上手に使っていたのは下田さん。上海にいるときから立候補の理由や抱負をツイッターやブログで発信していました。別荘民の立場から軽井沢を何とかしたいという情熱はブログを読んで理解できました。別荘民に投票権があったら当選していたかもしれませんね。
H 最初は「この人だれ?」と思われていたけど、ツイッターや討論会で親近感を持たれたようです。軽井沢のような小さな町ではネットワークが大切で知名度が影響しますから、無名の新人が町長選に出ること自体が驚異。最初は無謀なことをやる人だなという印象でした。
S 私もそんな印象を持っていましたが、合同討論会やパブリックバーでのインタビューを聞いて親近感を持ちました。合同討論会では、彼の発言※に会場がどよめきましたよ(笑)。
H 押金さんは町議会議員を2期務めてきたことやいろいろな組織に関わってきたので知名度があります。新軽井沢の消防団、商工会、観光協会、青年会議所など若手の応援を受けて活気がありました。良い政策が挙げられていましたが、出馬の決断が遅かったこと、庁舎計画の見直しが具体的でなかったことが響いたのではないでしょうか。
S 土屋さんは知名度がありませんでしたが、7月から準備に取り掛かり十分な活動期間があり、組織がしっかりしていました。ボランティアの人たちの輪が広がって勢いがありました。
※合同討論会YouTube https://www.youtube.com/watch?v=wkpSb5KSCOY
新町長に期待すること
H 土屋さんの勝因は、庁舎建て替えを白紙にして最初から考え直すという明確な態度が受け入れられたことに加えて、海外生活の経験や経営能力の実績も評価されたのではないかと思います。
M 今回の選挙では庁舎の問題以外にも、これだけ変わってしまった自然環境を何とかストップしたいという町民の気持ちが批判票となって表れていますね。
S そうですね。多くの山林や田畑が消えた現実を何とかしないと軽井沢がただの住宅地になってしまうという危機感は多くの人が感じていました。
M これ以上破壊されないように自然を守り、軽井沢らしい文化や上質な部分を失わないようにしてほしい。医療、教育、交通など生活に関わる政策を充実させるためにも、本質的な軽井沢の魅力を失われないようにすることが大事だと思います。
H 土屋さんは軽井沢からしばらく離れていて戻って来たので「Uターン町長」と言われていますね。それだけに外からの軽井沢がよく見えるし、町民や別荘民の気持ちもわかるのではないでしょうか。その視点に期待したいと思います。