寄付講座の監査請求、その結果を分析

軽井沢町が信大・東大連携の寄付講座として5年にわたり、2億5千万円という多額の寄付を行ったが、その使途が寄付講座とは関係のない支出をしているとして2023年3月13日に住民有志から監査請求が出された。4月3日には意見陳述を行い、さらに28日には追加請求を提出。請求人の調査によって、知られていなかった問題点が幾つか示された。

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棄却となったが、浮かび上がった驚きの事実

S(佐藤)3月に提出された監査請求の結果が出ましたね。どう思いましたか?

H(広川) 監査請求は提出から60日以内に監査委員が監査して結論を出すということになっているため、5月11日付けで監査結果が発表されました。

M(森)請求は棄却されましたね。あれほどひどい事実が出てきたのになぜ棄却なのでしょう。

H 監査は1年以内のことしかできないという制限があります。過去の審議ができないので、それ以前のことを問題に扱えないのです。藤巻前町長がこの寄付講座に強く肩入れしていたことや、町議会でも承認されていたため、違法や不当にはなりませんでした。

M とは言え、請求人の詳しい調査から驚きの事実が見つかりましたね。

S それについては監査請求書に詳しく書かれています。軽井沢町のHPから見ることができます。簡単に説明すると、住民の監査請求は

  • 信大・東大提携よる寄付講座に関係ない住宅関連費、
  • 軽井沢町民のためではないライフクリエーター講座
  • 恵シャレ―購入に関する不当な支出
  • 目的や成果のはっきりしない海外旅行、国内旅行8件、
  • 「利益相反」と疑われる問題。これについては、あとで詳しく説明します。

M 請求人からの報告書には、町民への報告会についても書いてあります。「寄付講座の報告会は5年の間に1回しか行われていない。唯一の報告会は2023年最終月の3月3日に行われたが、使途金についての説明はなかった」と。報告会をしないと継続できないから仕方なくギリギリの段階でやったという印象を受けますね。

H 寄付講座は年度ごとに活動報告書を町へ提出していますが、それは年月日を書き直すだけで、同じ内容を毎年コピペしたものです。町が行った軽井沢健診のチラシをそれにくっつけているだけの手抜き報告書です。私も情報公開請求をしてこれを見ていますが、軽井沢町に関係のない信州大学の学生に向けたライフクリエーター講座に関する説明書ばかりたくさん付いているのを見て変だなと思いました。議員はなぜ気がつかなかったのでしょうか?

M 国内外の旅行費についても具体的に書いてありますね。2018年はアメリカ、2019年はドイツへ2回、ドイツ・イギリスへ1回合計211万3554円。これだけのお金を使っていながら成果報告はされていません。2018年にはイギリス、ブラジルにも行っています、その金額は89万8690円。

H これも成果などの報告はないそうですよ。誰のお金を使って何のために行っているのでしょうか。国内旅行もありましたね。

M それも書いてあります。2020年度はコロナ禍だったので、海外旅行はありませんが、2020年12月28日に熱海の温泉旅館に1泊しています。今年3月3日の報告会では研究者の会合があったという説明でしたが、2020年12月20日には緊急事態宣言が出され、12月25日には菅総理大臣が記者会見をしている、「そんな状況の中で研究者の会合を行ったとは考えられない」「熱海宿泊旅行の目的が定かではない」と請求人は書いています。

2021年には奄美大島に5日間滞在してレンタカーを使用。これも報告書に目的や成果についての報告がありません。

「利益相反」の疑いとは

S 軽井沢NOWでも取り上げた「恵シャレ―の不動産仲介手数料」「信州大学ライフクリエーター講座の最下位」(詳しくは軽井沢NOWの『グレーな問題がさらに浮上』を参照)、追加請求で「利益相反」の疑いがクローズアップされました。

H これは本当にひどい話ですよ。軽井沢町からもらっている5000万円の中から、町民講座のチラシの印刷代や軽井沢オフィスの清掃費、施設利用料などが軽井沢先端学術センター(KAAC)に支払われていますが、その軽井沢先端学術センターというのが、何とも目的がよくわからないNPO法人の組織。検索するとHPが出てきて、名前も職業も公表されています。理事長は女性で信州大学社会基盤研究所の特任助教授、名前もはっきり書いてありますね。この人は社会基盤研究所所長の丸〇教授と熱海旅行に行った人だそうです。

M え~!ほんとですか?

S 名前が同姓同名ですし、検索で写真も出てきます。きれいな女性ですよ。

H 理事も10人中9人が信州大学の教員で、問題の社会基盤研究所関係が6人。副理事長の一人が軽井沢ではよく知られている軽井沢テレワーク協会副会長で信大特任教授のSK氏。彼はこの建物の所有者で、信州大学社会基盤研究所から軽井沢先端学術センターへ施設使用料が払われていますから、「利益相反」の疑いの一人に入ります。

S 登記では2018年から21年の3年間、軽井沢先端学術センターの住所が社会基盤研究所の住所と同じだったというのも問題ですね。

M 町から提供されている建物を「また貸し」していたということですか?

H  また貸しという意識はないのでしょう。同一の組織という認識なのでは。曖昧で怪しげな会社と見られても仕方ありませんね。

M いったい何の会社なのですか? NPO法人といったらまともな会社に見えますが。

S 事業内容を見ると、「①自治体が抱える課題に関する企画・調査・コンサルティング事業」「②パンフレットやフライヤーなど広告、デザイン事業」となっています。目的は「大学の研究成果を推進する事業を行う」なのに、「チラシの広告デザイン」がなぜ事業に入るのか、またなぜ「清掃費などを通して支払う事業」を行っているのか疑問です。

H SKさんは軽井沢へ来る前は都内の広告代理店にいましたから、その経験を活かしているのかもしれません。中間マージンを取るのは大手広告代理店の得意分野です。

(写真は軽井沢駅近くにある、軽井沢先端学術センターが入っているSK氏所有のビル)

軽井沢町は監査請求の意見や主張を重要ととらえた

S 軽井沢町から信州大学社会基盤研究所へ支払われたお金をチラシ制作費や清掃費として、同じ社会基盤研究所の特任教授たちが運営する軽井沢先端学術センターへ支払っている。それによって利益を得ているというのが「利益相反」にあたるということなんですね。自分たちでお金を回して利益を得ているという疑い。あくまでも疑いですが、住民の税金ですから問題になりますよ。

H そういうことがボロボロ出てきたわけですよ。

M  軽井沢町はいいカモにされたと言われていますね。

H 実際、軽井沢観光協会長はこの社会基盤研究所所長の丸〇教授とSK氏を顧問に入れ、観光政策をやろうとしていました。

M 新聞に書いてあった昨年の総会の記事でしょうか。『新価値の創造元年』として『イノベーション委員会』を設立し、信州大学の社会基盤研究所と包括連携協定を結んで、科学的なデータ取得や分析による商品開発を進めるという記事でした。

H 観光協会長はSK氏とはテレワーク協会の会長、副会長の間柄ですし、福井県との観光提携を図ったことなど結びつきが強かったですね。しかし、この寄付講座の問題が出るとすぐにSK氏を顧問から外しましたね。その素早さには観光協会の理事も驚いていました。

S SK氏は藤巻前町長とも親しくて、「町長肝いりの政策」と言われた風土フォーラムの会長も長年務めていましたね。その風土フォーラムには丸〇教授もメンバーでした。人間関係が色々つながって見えますね。

M 請求人からの報告を受けて、その内容に監査員は驚いたでしょうね。

S 一般町民も知らなかったことが次々に出て来て、びっくりしたと思いますよ。

H 町は監査せずに棄却ということもできたけど、そうしなかった理由をHPなどでもはっきり書いています。「請求人から出された主張や意見には傾聴すべき主張が存在し、その主張に耳を傾けることが町の将来にとっても重要ではないかとの考えから却下せずに監査をしたうえで結論を出すことにした」と述べています。これはとても意味のある言葉だと思います。

S 詳しく監査請求の内容を公表したことは今後の「寄付講座」の方向性に大きく影響することでしょう。

H 今年度の町の予算には入っていませんね。

M そうでしょうね。多分、多くの町民は「しっかりしろ!町議会議員」と怒鳴りたい気持ちだと思います。信州大学は国立大学なのですから、大学側が教授の行動を注視して襟を正し、信頼を取り戻してほしいと思います。でないと、学生たちが気の毒ですね。

S これだけ、色々なことが明るみになったので、住民訴訟をする必要はないということのようです。

H 監査請求人の皆様、お疲れ様でした。有意義な行動でした。

◆監査請求に関しての詳細は軽井沢町役場のホームページを参照。

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